01.チョコレートケーキ



ようやく取れた休日の午前中。

久しぶりに料理でもしてみようかと、大量に積み上がった本の森からお菓子のレシピ本を探し出したのが昨日の話。
少しばかり厚いページをパラパラと捲っていると、『愛しの彼に!』なんて文字が主張を始めた。
女の子がお菓子を作るときは、だいたい送り先があるものらしい。
そこでリタは嘆息する。
肝心の『彼』は甘いものが得意ではない。彼と呼べる年齢であるのかは果てしなく疑問ではあったが。
自分はといえば研究で疲労した頭を癒すには甘味が良いと知ってから、好んで食べるようになっていたのは言うまでもなくて。
回復のために仲間内でも時々作っていたが、その度にレイヴンはげんなりした表情を浮かべ渋々手をつけていた。
好き嫌いの激しい自分が咎められたことではなかったので別段気にしてもいなかったが、こうして単なる仲間関係以上になってしまうと、食べ物の好みというのはかなり重要になってくる。

午後からは魔導器のメンテナンスにレイヴンと会う予定が入っている。
そろそろ決めなくては、昼に間に合わなくなってしまう。
キッチンに向かう途中でふと気付く。
お菓子は自分のために作るのではなかったのか。

「……っ!」

一人暮らしの家の中、誰も見ていないとは頭ではわかっていつつも頬が火照るのを止められはしなかった。




チョコレートケーキ
(あんたでも食べられるように、苦くしてあげるから!)