03. 穏やかな日常

嘘のようだ、と思う。
ついこの前まで世界の毒とまで言われ、自分自身の命に関わる危機にさえ瀕していたのに。
エステリーゼはつい半年前の自分の置かれていた状況を、どこか他人事のようにさえ感じていた。

副帝としての仕事は難しい。
それは決してヨーデルが無理難題を押しつけているのではなく、むしろエステルのできる範囲で仕事を回してくれている。
ただ、仕事があまりにも膨大すぎるだけで。
こうしてときどき想いを風に任せてみることが必要になるくらいは、忙しい。
誰かの役に立てることは嬉しいし、毎日は十分すぎるくらいに充実していて。
ああ、生きているなあと、実感する。

満開のハルルの樹の下。
頬杖をついて地面に落ちるハルルの樹の花弁を眺めている。
にわかにその地面が暗く陰ると、頭の上の方から聞き慣れた声がした。

「エステル」
「……はい?」
「まーたなんか考え事してんのか?」
「あ、いえ、ただ」
「ただ?」
「幸せだなあって」






穏やかな日常
(これからも、ずっと)
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