一国の王女として、果たさなければならない責務がある。それなのに、心にぽっかりと穴が空いてしまったように、彼女は彼女の支えを失った。使命と感情の板挟みに遭って、彼女の心の色は悲哀に満ちているはずだ。目には現れない涙が、ぽつり、ぽつり、と心の中に波紋を作っていく。肝心の自分の手は、彼女に触れることすら出来ない。赤髪の二人は自分にとってもかけがえのない存在だ。

「久しぶりですわね。元気にしていらした?」
「はい…ナタリア様もお元気そうで何よりです」

まだ、仲間には帰れない。今日も自分と彼女は王女と他国の伯爵という距離で話し、当たり障りのない話をして、別れる。互いに暗い顔をしていても、それには目を瞑らなければいけない状況だ。周りに人がいれば、敬語を使わなくてはならないし、ましてや核心を突くことなどとてもできない。忙しさから、公の場でしか会えなくなりつつあった。
指先一センチから近づくことの出来ない自分に苛立ちともどかしさが襲ってくる。
目の前にいるのに。


彼女の後ろ姿を見送る。二つの長い影はとうとう合わさることはなく。

表情に影を帯びたまま、彼女は今日も国を背負う。
彼女の笑顔が痛々しい。



早く帰ってこい、と呟く。





震える背中は君の哀しみ
(伸びる影と二人の距離は遠く、遠く)



久しぶりのガイナタです。私の中では色褪せず、永遠に大好きなカプです。
切ない…。

[2011年 03月 17日]