小さい椅子に座り机に向かって、紅茶にミルクを溶かし、絵本の中の世界に入ったら、何も考えないで済む。そう思っていたのに。いつのまにか眠りの世界に入っていて、寝ぼけて書いてしまった文字は"寂しい"だった。
気付かないうちに、男の子と女の子が結ばれる幸せなストーリーに危機が迫っていて、悲しいお話になってしまった。それを無理に繕おうとすると、歪な喜劇になってしまった。はあ、と溜息をつく。けれど机に向かっていないと彼のことを考えてしまうから。わかっている。これは会いたいなんていうただの自分勝手な我が侭だ。彼だって、世界のために頑張っているのだから、わたしも一滴の涙くらいの寂しさは胸にとどめておかなければならない。
周りにはハルルの温かい人々がいて、帝都に仕事に出かければフレンがいて、ときどきはリタも訪ねてきてくれる。けれどいつも隣にいてくれた人は、いない。
「寂しくなんて、ないです…」
鏡を見れば、いつのまにか目は腫れていて、買い物に出かけようと思っていた今日の日程が台無しになってしまった。なんとか楽しいことを考えて、仕事に没頭すれば気がつけば空はオレンジ色に染まり、少し経てば夜になっていた。
窓の外からは、ひときわ輝く凛々の明星と、蒼く輝いた月が自分を見下ろしていた。
大丈夫。みんなが頑張っているから、私だって大丈夫です。
頭上の蒼月を仰いで
(寂しさを月に隠した兎)
エステルは、強くなくてもいいと思うんです。
それが彼女の魅力。
[2011年 03月 17日]